白んだ空、胸は明かず

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灰原哀という人気者(黒鉄の魚影ネタバレあり)

名探偵コナン最新作の「黒鉄の魚影」の感想・考察記事となります。

 

灰原哀と「イルカ」について特別に記事にしたいと思い、私の別の感想記事からこの観点でのみ加筆修正し、抜粋します。

 

黒鉄の魚影のEDではスピッツの「美しい鰭」が流れます。

その最後のカットは八丈島ホテルメインロビーのフロントにある鯨とイルカをかたどったスタチューのオブジェのミニチュアが描かれています。

 

本記事では、そこのみに焦点を当てます。

 

「黒鉄の魚影」では、コナンらはホエールウォッチングツアーのために八丈島を訪れたので、「鯨のフィギュア」が出てくるところまでは分かります。

 

しかし、最後のカットは「イルカ」です。

 

本作において、最後に「イルカのスタチュー」が映されたのは必ず意味があると私は考えています。

 

私は、原作31巻「網にかかった謎」の灰原の以下の発言を思い出しました。

 

「相手はイルカ… そう…… 海の人気者…。暗く冷たい海の底から逃げてきた意地の悪いサメなんかじゃ、とても歯が立たないでしょうね…」

 

この前後の話から推測するに、「イルカ」は蘭、「サメ」は灰原自身を指しています。

コナンへの嫉妬、蘭への憧れと羨望が察せられます。

 

今作の終盤にて、灰原はコナンへ人工呼吸という名の「キスをした」と明言し、新一への恋慕を明確にし、その上で「蘭にキスすることで『返した』」と明言します。

 

そうなってくると、灰原にとって蘭は恋敵となります。

 

しかし、灰原は過去の原作中で蘭から距離を置くような素振りを見せていたのにも関わらず、蘭は灰原へ無償の愛を与えたシーンが随所にあります。(「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」の回が顕著です。)

 

今作でも、蘭の灰原に対する無償の愛は健在でした。

今作で、灰原がウォッカピンガに攫われたシーンでは真っ先に飛び出したり、灰原が潜水艦から脱出し助かった後には蘭がすぐさま灰原に駆け寄り抱きしめた上で、「もう大丈夫だよ」と声をかけます。

 

そんな蘭を見て、灰原はどう思ったのか、

その結果が、灰原の目に常に入る阿笠邸のTV前のテーブルにイルカが象られたスタチューを置けるくらいに灰原も蘭を尊敬し、好きになった、そう思えてならないのです。

 

さらに、この「イルカ」のカットには、製作陣からのメッセージも込められているのではないかと思いました。

それは、上記灰原の発言に対し、製作陣からの「灰原哀というキャラクターは、コナンという作劇において、アイドル=人気者としての地位を確立した、立派なイルカだ。サメなんかではない。」といった返答ではないかと思います。

なぜそう思ったのかと言うと、あのイルカは一匹だけ象られている訳ではなく、複数存在しているからです。

元となったオブジェをそのまま描いたとも受け取れますが、それだけでなく、最後のカットで敢えて複数を写したのは灰原哀もイルカ=人気者、ヒロインの一員だと、そう観客に、そして灰原に伝えるためではないでしょうか。

 

今作「黒鉄の魚影」は原作愛、灰原愛に溢れた製作陣の傑作だと私は思います。

過去のコナン映画と比較して、「この作品が最も良い」、「一番好き」と言うファンも多いのかなと思っています。

私自身、連日で劇場へ鑑賞しに行くというほどに、感動できました。

 

別の記事からの抜粋(修正)となりましたが、ここまで読んでくださいましたら幸いです。