「名探偵コナン 黒鉄の魚影」 感想雑記(ネタバレあり)
「名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)」を今日池袋のIMAXで鑑賞しました。
IMAXはやっぱり映像と音響が素晴らしいですね。
ネタバレ有りの感想など、Twitterには書きたくないので、ここで書きます。
個人的には、これまでのコナン映画の中でも指折りの傑作と言えるのではないか、と思います。
そう思った理由などを小規模なものから順に書きたいと思います。
OP映像
私が「コナン映画が始まったな」と思うのはいつも劇場で観るOP映像シーンですね。
いつも通りの工藤新一の解説から入りますが、今回は色が違いました。
「魚影」とかけて、新一以外の主要キャラクター解説ではシルエットのみで表されていました。
この時点で、「もう皆んな知っているよね? 今回は原作既読の人向けだからね?」みたいな製作陣のメッセージも込められているのでは?という思いがよぎり、映画に向かう姿勢を正しました。
阿笠博士の発明品オンパレード
これ、凄い。
今回活躍した発明品を挙げると、以下のようになります。
- 蝶ネクタイ型変声機
- 腕時計型麻酔銃
- キック力増強シューズ
- 犯人追跡メガネ(と、付属の集音器)
- 伸縮サスペンダー
- DBバッジ
- ターボエンジン付きスケートボード
- 腕時計型ライト
- どこでもボール射出ベルト
- 小型酸素ボンベ
- (新登場の)水中スクーター
これらが全て、雑に扱われることなく、ちゃんと機能して物語に組み込まれていたの、かなり良かったと思います。
原作の過去エピソードとのリンク
今作で「灰原哀」という少女に決着を付けたい、そんな意気込みさえ感じるようなストーリーでした。
たぶん、今作は原作の灰原哀をちゃんと記憶していないと理解しきれないと思います。
まず、ユーロポールのニーナを、キールの肩を撃ち抜いて仕留めるジンのシーン。
鼻から灰原哀のシーンではないですが、キールの右肩を人の放った銃弾が撃ち抜くシーンは製作陣のセルフオマージュです。
過去に灰原哀は、杯戸シティホテルでピスコから逃れるために中国酒(パイカル)を飲んで18歳の姿に戻った後、煙突から出た後にジンに見つかり、背後から撃たれています(原作24巻収録「黒の組織との再会」)。
この時撃たれたのが、今作のキールと同じ右肩です。なので、このシーンは製作陣のセルフオマージュであると思います。
灰原の劇中初登場シーンは探偵少年団が八丈島のホエールウォッチングツアーが当たるという福引をしているシーンです。そのシーンでは、灰原がフサエブランドに興味を示し、整理券を手に入れますが、近くのお婆さんに譲ります。
フサエブランドは、原作40巻収録「イチョウ色の初恋」で初登場したフサエ・キャンベル・木之下(阿笠博士が初恋相手で、阿笠博士も初恋)が立ち上げたブランドです。以降、灰原がこのブランドを愛好しているシーンは原作でも何回か見ることができます。
(このシーンの直前で、ベルモットが安室と会話しながら見ているスマホのニュース欄には、フサエブランドの特集ページが表示されており、ベルモットが興味を示しています。これがきっかけで灰原と遭遇し、ラストのお婆さんの正体に関する伏線にもなっていると思います。)
その後、園子が灰原へのご褒美として少年探偵団をお父さんの所有するホテルに招待します(いつもの)。
園子が灰原に対して、「いけすかないガキンチョだと思っていたけど,優しいところあるじゃん。」みたいな発言をしていたのが印象的に描かれていましたね。
園子と灰原は一緒になって話す機会は少なく、水平線上の陰謀で園子と灰原がかくれんぼの鬼になったシーンでは、園子が灰原に苦手意識を持っているように描かれていましたが、今作で二人の仲が深まったと考えて良いでしょう。
劇中では灰原にコナンが眼鏡をかけるシーンも印象的です。
コナンが灰原に「これをかけていれば大丈夫だ」と言い、灰原が「結局ピスコに見つかったけどね」と言っていましたが、これは原作24巻収録「黒の組織との再会」での事を指しています。
余談ですが、今回はコナンが灰原にいつもの眼鏡を渡したので、コナンに予備の眼鏡を付ける事になりました。私にとって、原作で予備の眼鏡登場シーンで印象に残っているのは、原作42巻収録「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」ですかね。灰原が予備の眼鏡の追跡装置を利用して、コナンを追跡をし、ベルモットやジュディと遭遇することとなりました。
続いて、組織の潜水艦内での灰原と直美・アルジェントの会話シーンでは、灰原が「子供の言葉や行動に人生が変えられることもある」と言い放ちます。
劇中でどの言葉なのかまでは言及されていませんでしたが、私はおそらく、灰原がFBIによる証人プログラムを断った決め手ともなった歩美の「逃げたくない!」という台詞を指しているのではないかと思います。原作42~43巻収録「お尻のマークを探せ」にて、犯人の顔を目撃していると思われる歩美が犯人候補の中から犯人を見つける直前で「逃げたくない!」と言ったシーンですね。
灰原と直美が潜水艦から脱出し、コナンに助けられ、蘭らの乗る船に乗船したシーンでは、蘭が灰原に抱きつき「無事で良かった。もう大丈夫だから。」と声をかけ、そして灰原が姉の宮野明美を想起するシーンもありました。
蘭が灰原に抱きつき、灰原が姉を想起するシーンは今作で2回目です。
1回目は、原作42巻収録「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」のシーンです。
その回では、灰原が予備の眼鏡の追跡装置を利用しコナンを追った後、ベルモットやカルバドスに撃たれそうになる中、蘭が飛び出し灰原を庇っています。
その時蘭が灰原にかけた言葉が、「もう少しの辛抱だから、お願い」となっています。
そして、灰原は蘭と姉を重ね、想起します。
今作の中で、灰原が今までにコナンに救われるシーンが走馬灯のように流れるシーンがありました。
劇中では原作29巻収録「謎めいた乗客」で灰原が自決覚悟で爆発寸前のバスに残ったもののコナンに救われたシーンが強く印象的に描かれていました。
今作の灰原がコナンへ人工呼吸するシーンは名シーンとして記憶されていると思います。
あのシーンは、劇場版第2作「14番目の標的」で蘭が水中でコナンへ人工呼吸したシーンを彷彿とさせます。今作のものと似ているようで、似ていない微妙な塩梅で対比させているように見えました。
映画終了間際のイルカのスタチューについて
正直、これが書きたくてここまでつらつらと書いていました。
「黒鉄の魚影」では、コナンらはホエールウォッチングツアーのために八丈島を訪れたので、「鯨のフィギュア」が出てくるところまでは普通に観ていました。
最後に「イルカのスタチュー」が映されたのは必ず意味があると私は考えています。
(イルカのスタチューというより、鯨と一緒に象られた八丈島ホテルフロントのオブジェのミニチュア、といった方が適切ですが…)
私は、原作31巻「網にかかった謎」の灰原の以下の発言を思い出しました。
「相手はイルカ… そう…… 海の人気者…。暗く冷たい海の底から逃げてきた意地の悪いサメなんかじゃ、とても歯が立たないでしょうね…」
この前後の話から推測するに、「イルカ」は蘭、「サメ」は灰原自身を指しています。
今作、灰原はコナンへ人工呼吸という名のキスをしたと明言し、新一への恋慕を明確にし、その上で「蘭にキスすることで『返した』」のです。
灰原は過去の原作中で蘭から距離を置くような素振りを見せていたのに、蘭は灰原へ無償の愛を与えたシーンが随所にあります。
今作でも、蘭の灰原に対する無償の愛は健在でした。
そんな蘭を見て、灰原はどう思ったのか、
その結果が、灰原の目に常に入る阿笠邸のTV前のテーブルにイルカが象られたスタチューを置けるくらいに、灰原も蘭を好きになったというシーンに繋がる、そう思えてならないのです。
さらに、2回目を鑑賞し、製作陣からのメッセージも込められているのではないかと思いました。
それは、上記灰原の発言に対し、製作陣からの「灰原哀というキャラクターは、コナンという作劇において、アイドル=人気者としての地位を確立した、立派なイルカだ。サメなんかではない。」といった返答ではないかと思います。
なぜそう思ったのかと言うと、あのイルカは一匹だけ象られている訳ではなく、複数存在しているからです。元となったオブジェを描いたとも思いますが、最後のカットで敢えて複数を写したのは灰原哀もイルカの一員だと、そう観客に伝えるためではないでしょうか。
最後に、
今作「黒鉄の魚影」は原作愛、灰原愛に溢れた製作陣の傑作だと私は思います。
過去のコナン映画と比較して、「この作品が最も良い」、「一番好き」と言うファンも多いのかなと思っています。
コナン(新一)と灰原の関係性は別のどなたかが執筆されているでしょうから、ここではあえて触れません。
そちらの考察や感想等は一人で拝読させていただきます。
補足として、
灰原哀を理解して映画を楽しむために、原作・アニメエピソードの中から選りすぐりを記載しておきます。