白んだ空、胸は明かず

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(ネタバレ有り)「ISLAND」既プレイ者向け感想 ~Part2~

昨日は、凛音編までの「問題提起ルート」の感想を書きました。

今回は解答編とも言える、「冬編」と「真夏編」の感想と総括を書きたいと思います。

もちろんネタバレ有りです。

 

5.冬編

はじめに状況を整理すると……。

刹那がコールドスリープマシンに乗っていた期間は約2万年。

舞台は22016年へと大きく変容します。

氷河期を迎えた地球は急速に寒冷し、人類は食糧難に陥った。

そんな人類は初めに争い、侵略行為を繰り返した。

それから反省した人類、特にユーラシア大国はアイランドと呼ばれる巨大なシェルターを建造し、氷河期を乗り越えようとした。

刹那は「セツナ」へと名前を変え、アイランドに生きるリンネの兄として、サラの護衛として、カレンの友人として、この退廃した世界を生きていく。

 

以下感想。

冬編は共通ルートとほぼ同じ導入から始まる。

それ故に、プレスヤーは必ずあの印象的なプロローグを思い出すことだろう。

そして、これまでは靄がかかってしか見ることのできなかった少女のCG。

その娘の正体がこのプロローグで判明する。

だから「ああ、ここからが本編なんだな」という感覚を得た。

今までのは巨大な伏線に過ぎなかったのだと。

1999年が舞台の3ルートはギャルゲー、

22016年が舞台の冬編以降はそんな3ルートさえもを踏み台とした、壮大なSF物語としての色を帯びている。

何が驚いたって、「ISLAND」が「NEVER ISLAND」へと変わったこと。

タイトルまでをも変えてくるあたりにライターの本気さが伺える。

この時の衝撃は「WHITE ALBUM2」でcodaに突入した時と同じほどのものだった。

この「冬編」では退廃した世界で必死に生きていく人たちの強さを実感できる。

その日の食糧にありつくためには手段を選ばない少女たち、飢餓に陥りそうな子供に人知れず食糧をあげる少女、そして世界を救うために研究しながら生きている少女。

みんなが必死に生きている、こんな荒廃した世界の中で。

主人公とプレイヤーはそんな生きざまに魅かれ、

そして彼女たちの「死」に憤慨せざるを得なくなる。

冬編はこれまでの刹那の記憶の残滓の解答編でもある。

薄靄のかかった少女は凛音で、いくつもの暗い影はすべてこの「アイランド」で起こった出来事のことだった。

いや、さすがに2万年後の世界への伏線だなんて考えられないわ・・・(笑)

あと、この冬編では「シュレディンガーの猫」、「アカシックレコード」、「タキオン粒子」、「囚人のジレンマ」について扱われる。

特にシュレディンガーの猫アカシックレコードについては、主人公あるいはライターがプレイヤーに訴えているように感じた。

仮にゲームの中のキャラに魂があるなら、ゲームディスクは文字通りアカシックレコードだ。

彼らの行動すべてを記録しているのだから。

彼らの行為が追加・修正されれば、アップデートがされ、さらに記録される。

ゲーム(ディスク)の中にいる彼らを私たちは事細かに観測している。

私たちがゲームを起動するたびに彼らは輪廻世界を旅する。

そして彼らの冒険譚を時に興奮し、時に涙しながらたのしむ。

「自らがシステムの外側にいることを、後悔しないのか?」

そして、このセリフである。

誰だって一度は想起するだろう。

「この面白い世界に行けたら・・・」

なんてことは。

そのような人間の思いを交えながら言葉巧みに輪廻転生説を提唱しているこのシーンはとても良かった。

最後にセツナはリンネと共に”タイムマシン”を完成させ、過去へと飛びたつ。

「せつなを殺す」という使命を抱えて。

しかし、飛んだ先はまたしても1999年。

そう、あの夏の日々へと戻るのだった。

 

6.真夏編

本当の最終章である。

セツナは記憶を保持したまま1999年に回帰する。

二つの大きな誤解を抱えたまま。

1つは「過去へとタイムトラベルしたという誤解」、

もう1つは「凛音=リンネという誤解」

おそらく多くのプレイヤーもこの二つの誤解をしていたはずだ。

真相は「タイムマシンだと思っていた装置は今なおコールドスリープマシンに過ぎず、世界全体がループしていた」という壮大な仕組み。

そして、「玖音=リンネ」という事実。

 

「かつてこの世界に愛し合う男女がいた。男の名は、刹那。女の名は凛音。しかし二人は決して結ばれてはならない運命にあった。ーー二人は血の繋がった家族だった」

このお伽話。

これこそが「ISLAND」の真相だった。

答えははじめから提示されていたのだった。

1999年世界の凛音は刹那と玖音の娘。

22016年世界のセツナとリンネは兄弟。

”せつな”と”りんね”は血が繋がっている。

主人公とプレイヤーが旅してきた世界で、それを確かめた。

だから主人公はまたしても”りんね”に巡り合うために、世界の理を破壊し、ループから脱出するために未来へ行く。22016年へと。

 

物語はここで幕を閉じる。

 

「おとぎばなし」こそが「ISLAND」のストーリーであり、そのおとぎばなしの続きを創るために、原初を破壊するために主人公は旅を続ける。

このシナリオがとても清々しくて良かった。

 

 

7.総括

私は「男女間の恋愛もの」や「タイムトラベルもの」をプレイし見すぎた。

だから虚を突かれた。

「ISLAND」は純然たる「家族愛」を描いており、「ループに囚われているのは世界そのものだった」。

”せつな”は輪廻する三千世界を旅し、”りんね”と刹那の時を過ごすために生きる。

”せつな”は最後はその刹那の時を「刹那じゃなくするため」に、「輪廻を断ち切るため」に、最後の”りんね”に会いに行く。

その姿は「男」であり、同時に「父」でもあるように見えた。

「ISLAND」は、まさしく、

「せつなと(りんねの)えいえんのおとぎばなし」である。

 

せつな達は本当に輪廻から脱出できるのか。

それは分からない。

このゲーム(アカシックレコード)に記されていないから。

でも、記されていないからこそ、その先にはシュレディンガー的に無限の可能性がある。

この物語はそれでいいのだと思う。

今まで、何十回、何百回、何千回、何万回と繰り返してきた世界を私たちは観測し、既定してしまった。

これから先の未来は観測者(プレイヤー、ライター)に囚われず、

彼ら自身が規定していければ良いのだ。

我々、外の人間は、ただ想像するだけで良いのだ。

 

~END~